TVアニメ『池袋ウエストゲートパーク』

SPECIAL

マコトとキングの
IWGPアフレコ・レポート
石田衣良

 自称池袋イチ頭の回転が速い果物屋手伝い・真島マコトとお馴染みGボーイズのキング・安藤タカシに、アニメ版『池袋ウエストゲートパーク』のアフレコ模様を取材にいってもらった。さてさて、このふたり、どんなレポートをしてくれるだろうか。場所は渋谷区某所にある録音スタジオだ。

マコト(以下M)
「なんだか、ここ洒落過ぎて落ち着かないな。地下なのに観葉植物とかあってさ」

タカシ(以下T)
「ちゃんと現場の報告をしろ、マコト。おれたちの目の前にあるガラスの向こうに、録音用のブースがあるな」

M「ああ、それでこっちのブースには越田知明監督や脚本の志茂文彦さん、それに音響監督やプロデューサーなんかのお偉いさんがずらりと顔を揃えてる。これじゃあ、演技をするのもプレッシャーだな」

T「おまえと違って、みんな腕利きのプロだ。無用の心配だろ。録音ブースにはコロナ対策で、スタンドマイクのあいだに分厚い透明ビニールが垂らされてる。あっ、おまえの役をやってくれる熊谷健太郎さんがきたぞ。若いんだな、それにマコトよりイケメンだ」

M「タカシはいつもひと言多いな。収録が始まった。へえ、おれって、こんな声なんだな」

T「ああ、エモーショナルでいい感じじゃないか。すこしひねくれてるが、おせっかいで人一倍の人情家、マコトにはぴったりだ。音響監督から指導が入ったな」

M「すごいな、用意してきた演技をその場でさっと変更して、声のトーンまで変えてくる。瞬間で反応できるんだな。さすがプロだ。おい、つぎはキングの役だぞ」

T「おれを演じてくれるのは、内山昂輝さん。マコトと違って、断然クールだな」

M「おまえの冷たいけど、底に情熱を秘めた感じがよく出てるよ。イケボ過ぎる気もするけどなあ。ちょっとここのスタッフはタカシを贔屓してないか。アニメのなかでも、いつもおれよりいい服着てるしなあ」

T「事実、おれは池袋イチのイケボだろ。あれで正解だ」

M「ほざいてろ。キョウイチ役の土田玲央さんがきた。レッドエンジェルスのヘッドだよな。カッコいいな」

T「あいつのダンスの実力は、おれも認めてる。内戦が始まる前は、そこそこ仲がよかったんだがな」

M「キョウイチはタカシと並ぶ池袋のイケメン、ツートップだもんな。現実離れした、シュールな雰囲気がよくでてるよ。池袋の街をふたつに割った内戦か。Gボーイズもあまり派手にレッドエンジェルスとやりあうなよ」

T「それはキョウイチの出方しだいだ。おれたちのほうが挑発を受ける立場だからな」

M「つぎはヒロト役の木村昴さんだ。ヒロトはガタイがいい肉体だけど、声もちゃんとじゃじゃ馬でマッチョな雰囲気が出てるなあ。タカシはこいつのチームとも抗争を起こすんだよな」

T「ああ、チャンピオンにはいつだって、強い挑戦者がいるもんだ」

M「そういう意味では、磯貝はちょっと立場が違うよな。こいつはキョウイチの右腕で、レッドエンジェルスの頭脳、しかもとある組織ともつながってるという複雑な役だけど」

T「ああ、ヒロトみたいな筋肉派チャレンジャーではないな。だが、このシリーズの闇を象徴するような重要な役だ」

M「演じてくれるのは、花江夏樹さん。穏やかな雰囲気からは、想像もできない凄みが出てきたな。さすがだよ」

T「改めて、アフレコを振り返ると、声優陣の声の多彩さ、迫真の演技力、それにその場で演技プランを瞬時に変更するアジャスト力が、おれは印象的だったな」

M「ああ、最後のアジャストする力には、プロの底力を痛感したよ。みんな引き出しが多いんだよな。こんなふうに動画に声の演技が加わって、何倍にもアニメーションが魅力的になっていく。おれも昔からアニメは好きだったけど、今度からはちゃんと正座して観ようって気になったよ」

T「マコトのいう通りだな。とんでもない時間と労力と才能が集結して、世界に誇るジャパニメーションが完成されていく。池袋のGボーイズだけでなく、日本中のファンにもこのアニメを早く観せてやりたいな」